
こんにちは。埼玉県ふじみ野市で活動している、こどもえいごクラブJacarandaです。
自粛している間に、季節はすっかり移り変わってしまいましたね。人出の少ない場所と時間を見つけて少しだけお散歩してみると、菜の花にとまったテントウムシさんを見つけましたよ。
今回は、世界中で大人気のテントウムシのお話です。
英語名;Ladybird(Ladybug) の由来
イギリスで親しまれているマザーグース(英語の童謡)に、こんな歌があります。

Ladybird, ladybird, fly away home.
Your house is on fire.
And your children are gone.
All except one, and her name is Ann.
And she hid under the baking pan.
日本で言えば、咲いた咲いた♪の「チューリップ」や「さっちゃん」などと同じくらい有名な歌です。
可愛いテントウムシさんの歌かと思いきや、子どもが留守番している家が火事だよという、恐ろしい歌詞。
日本でも「かごめかごめ」のように歌詞が奇妙なものや、「しゃぼんだま」のように悲しみが込められたものがありますね。時に、子どもたちが無邪気に歌うのとは裏腹な歌詞の童謡は、世界中にいくつもあります。「ロンドン橋落ちる」だって不謹慎ですもの…。深く考えたら歌えなくなる…、童謡の謎です。
この歌に登場する “Ladybird” が、イギリス英語の「テントウムシ」です(アメリカ英語ではLadybug)。
本当に不思議な名前ですよね…。まず、なぜ bird(鳥)なのか。
もう、根本から間違っている。あれは虫だ。どんなにひいき目で見ても、さすがに鳥と言うにはハードルが高い。ここはアメリカ英語(bug=虫)が素直な気がします。
“bird”と呼ばれているはっきりした理由はわかりません(…もちろん、イギリス人も「あれは虫だ。」とは思っています)。でも、きっと愛されているんだなということは伝わってきます。
そして、Ladyの謎。テントウムシってご婦人だったのかしら?
…と思ったら、その正体を知ってびっくり。Ladyとは、近所の奥様とは違って、実は、キリスト教の聖母マリアのことだと言われています。

「マリア様の鳥」とは、なんと美しく神聖なお名前なんでしょうか!
まさか、小さくて、丸くて、コロコロしたあの虫が、マリア様の鳥だなんて…。なかなか似つきません(失礼)。
日本語名;テントウムシの由来

テントウムシの神秘的な英語名には驚かされましたが、よく考えてみましょう。
日本語名も、これまた立派なものです。
だって、テントウムシの「テントウ」は、天道ですから!
日本では昔から、生き方を嗜めたり、律したりする時に「お天道様は見ていますよ。」などと言われてきました。
太陽を神として祀る呼び方で、天照大神を意味することもあります。
お天道様の虫、神様の虫という意味なのです。
今まであまり意識せず「テントウムシ」と呼んでいましたが、実は、こんなにありがたいお名前だったのですね!
その由来は、天を目指して、縦に上へと飛んでいくから、なのだそう。…そうでしたっけ?(横には飛ばない?)
世界中で付けられている神聖な名前
さらに驚くことに、テントウムシに神聖な名前を付けたのは、日本語や英語だけでなく、世界中のあらゆる言語で同じです。
調べてみると、フランス語、ドイツ語でも「神の虫」「聖母マリアの虫」と呼ばれる他、ロシア語ではなんと「神の牛」と呼ぶそう。鳥どころではない…。また韓国では「巫女の虫」と言うそうです。
名前も然り、存在そのものが「幸運をもたらすもの」として、お祝いごとのモチーフになることがあります。
日本を含め、世界中で結婚式のアイテムに使われたり「テントウムシが留まった人には良いことがある。」と言われたり。

逆に、テントウムシをいじめると祟りが起こると言う人もいます。
輸入菓子でも、テントウムシ型のチョコレートをよく見かけますね。縁起が良くて可愛いので、贈り物にも大人気です。
テントウムシは、世界共通の幸運のシンボルなのです。
テントウムシに敵なし!
つるつるの真っ赤な羽にドット柄。そんな可愛らしい姿が世界中で愛されて、素敵な名前を付けてもらったんだな、ということは容易に想像できるかも知れません。
でも、理由は他にもあるようですよ。
まず、テントウムシは害虫を食べてくれるということ。
私たちの食となる農作物を守ってくれるということは、つまり命を守ってくれるということです。神の恵みに繋がることも、なるほど納得できます。
さらにもうひとつ、決定的な理由は、テントウムシは鳥に狙われない、ということです。
あんなに目立つルックスだから、鳥にだってすぐ見つかってしまいます。でも、鳥はテントウムシを警戒して近づこうとしないのです。
その理由は、テントウムシがすごく不味いかららしいのですが、派手な姿で堂々と現れ、敵にも敬遠される存在は、確かに神々しく感じられますよね。
色々な理由があるとはいえ、これほどに全世界のアイドルとなった生物は、他になかなかいないのではないかと思います。テントウムシには、人々を魅了する不思議な力があるのかも知れません。
虫にまつわる英語表現
最後に、虫を使った英語表現をご紹介します(Ladybirdがなくてごめんなさい!)

have a butterfly in one’s stomach
→お腹の中に蝶々を飼ってる。
=緊張してドキドキする。
例)When I stood on stage, I had a butterfly in my stomach.
舞台に立った時、私は緊張してドキドキしていた。

the bee’s knees
→蜂の膝
=最高のもの、最適なもの
例) “What do you think of the new boss? “Oh, he is the bee’s knees!”
「新しい上司のこと、どう思う?」「あぁ、彼は最高だよ!」

knee-high to a grasshopper
→バッタの膝までの高さ
=ほんの幼い、子どもの
例)Her son is only knee-high to a grasshopper.
彼女の息子は、まだほんの小さな子どもだ。
a grasshopper mind
→バッタの心
=集中力のない、気移りしやすい
例)He couldn’t finish his homework in time because of his grasshopper mind.
彼は集中力がないせいで、時間内に宿題をやり終えられなかった。

open up a can of worms
→ミミズの缶を開ける。
=厄介なことになる。余計なことをして事をややこしくする。
例)Her thoughtless words opened up a can of worms.
彼女の心ない言葉が地雷を踏んでしまった。
もしテントウムシが留まったら、お願い事をして、そっと逃してあげてくださいね。
興味がある方は、ぜひ他の虫の呼び方も調べてみてください。「トンボ」や「ホタル」にはカッコいい名前が付いていますよ!